名勝錦帯橋再建記
その3 (54〜100頁) / 全400頁
岩国中央図書館所蔵
品川 資(当時、岩国市錦帯橋建設局次長) 著述 1954年5月発行
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第1編 資金及び資材
A 工事費と財源
1 工事費及び財源決定の基準
2 財源の内訳と変動の経緯
3 工事予算及び決済
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第1編 資金及び資材
A 工事費と財源
1 工事費及び財源決定の基準
錦川とダムは国が管理しており、また戦後の無計画な砂利採取を認可した国と県の責任は重く全額、国と県の予算で復旧すべきであると岩国市は主張した。
再建工事費は過去の架替え工事費、物価変動率、特殊規格資材の使用、近代工法の採用を勘案して約1億5千万円と見込んだ。
(注、物価変動率から現在の貨幣価格では概ね50〜60億円であり、平成の錦帯橋架け替え工事費が26億円だったので橋脚2箇所が崩れたとはいえ大目である。)
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建設省は見積額が過大であり、建設省は普通の平らな橋を建設する予算相当は出せるが、これを超える費用は文化財保護当局と山口県が出費すべきとの見解であった。
これを受け、岩国市は文化財保護当局と山口県に各1千万円の予算確保を依頼した
2 財源の内訳と変動の経緯
財源は(1)建設省国庫負担(2)文化財補助(3)山口県補助(4)寄付(5)岩国市負担であるが、各々支出時期や金額が事情に応じて変動があった。
(1)外部財源
イ 建設省の国庫負担金
建設省の査定では総工費77,430,000円で、事務経費以外の設計工事費は66,320,000円、国庫負担金は46,072,000と当初、決定された。
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しかし、錦帯橋橋脚が崩れたキジヤ台風の翌年、昭和26年7月に発生したケイト台風、昭和26年10月のルース台風で九州、中国地方は甚大な災害を被った。
キジヤ台風やケイト台風で持ちこたえた錦帯橋下流の橋が、ルース台風では大正橋以外、尽く落橋、流失した。
錦帯橋再建工事も甚大な被害があった。
建設省は災害復旧のため、直ちに錦帯橋再建工事の再査定を行い
総工費109,683,000円で、事務経費以外の設計工事費は88,148,000円、国庫負担金を69,588,000円に増額した。
だが、10月のルース台風ではケイト台風の数倍の被害を被った
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岩国市は設計変更等の名目で更なる国庫負担金増額を求めたが、建設省は総工費と設計金額は据え置き、国庫負担金だけを75,073,000円に増額した。
その後、国庫負担金の比率変更があり、国庫負担金は78,000,000円に増額となり岩国市は大いに喜び錦帯橋再建工事に光明が差した。
錦帯橋再建工事費用の大半を賄う有力な財源になった。
ロ 文化財(保護委員会)補助金
文化財保護委員会の補助金は、「名勝記念物」の復旧であり「太鼓橋」に関する木造橋体や橋脚の積み石、河床の石畳の復元費用で
建設省予算で不足した費用を補うものである。建設省の国庫負担金は剰余金が出た場合は国庫に返納する義務があるが、文化財保護費用は返納する義務を
負わない。
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文化財保護費用は工事費用が不足の場合に支給されるため1年遅れで予算が決まる。当初計画では事務当局より1千万円の内諾があり
昭和27年4月に50万円支給された。総額を工事費に組み込むことができないので、岩国市関係者は上京して文化財当局と交渉を重ね次の合意を得た。
(1)文化財保護委員会が支出可能な総額は最高6百万円で、努力目標である
(2)昭和27年度予算は大蔵省が承認した2百万円である。残額は昭和28年度の予算交渉で努力する
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錦帯橋再建工事は順調に進み、昭和28年1月15日には渡り初めが実施できる状況になった。建設省は完成すれば早急に一般の通行に供すべきとの
意向であったが、文化財当局は竣工前に渡り初めを行えば大蔵省との交渉に影響を与えるので延期せよとの意向であった。
岩国市は竣工前渡り初め実施の許可申請書を文化財保護委員長宛に提出して、昭和28年1月15日の渡り初め式実施の準備を始めた。
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各新聞で錦帯橋渡り初めの記事が大々的に出たので、大蔵省を刺激し「完成したものに多額の補助金を出す必要はない」との
見解で昭和28年度の350万円交付金予算は100万円に減額になった。
結局、文化財保護委員からの補助金は3年間で350万円であった。
但し、文化財保護委員の年間予算は約600〜700万円で全国の文化財に適時配分しており
錦帯橋だけに350万円補助して頂いたことは破格の厚遇であり特筆すべきものである。
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ハ 山口県の助成金
岩国市は錦帯橋流失以来、度々、山口県当局に対して助成金1千万円の支出の件を交渉し、昭和26年3月16日岩国市長及び岩国市議会議長は連名で
山口県知事及び山口県議会長宛に1千万円交付促進陳情書を提出した。更にルース台風の現地視察に訪れた田中山口県知事、小沢副知事、県議会の
各委員に陳情した。遂に昭和26年度の山口県追加予算で1千万円全額支出が県議会で承認された。
ニ 寄付金
戦後の困窮した時代で期待をもてない上、経費倒れになる可能性があったので寄付金募集運動は展開しなかった。それでも32万円の寄付金が集まった。
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主な寄付者は以下である
山口県十市市長会 代表 山下太郎 10万円
義済堂 労使 代表 白木正人 5万円
山口県十市議会議長会 5.4万円
宮野甚一 ほか 3.5万円
毎日新聞社 3.45万円
岩国市土木協会 代表 日野賢 1万円
錦帯橋建設鉄工会 代表 梶川岩雄 1万円
(以下、省略)
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(1)内部財源
イ 一般会計よりの繰入金
岩国市負担の工事費は起債によるが、事務経費は国庫負担金の5%と岩国市一般会計から繰り入れた1千万円の特別会計で賄った。
国庫等の交付金や補助金は工事の後に交付されるため、目先の運用資金を借り入れており利息が約2百万円かかった。また物価高騰による
人件費ベースアップ1百万円の計3百万円が想定外の出費で岩国市議会で問題になった。
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利息を節約して臨機応変の工事を行わなかったら工事が停滞するので、利息はかかったが問題ないと考えている。
実際、工期は予定より4ヶ月早く完成しており人件費を節約している。
しかし、3百万円は岩国市の財政事情から困難なので市債発行で賄った。
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当初、岩国市の負担は2千万円と見込まれたが、数度に及ぶ天然被害と人件費高騰により市債発行額は32,200,000円、一般会計からの繰入金を合計すると
42,200,000円に膨らんだ。結局、総工費の約37.4%になった。
注 建設省は当初、総工費は109,683,000円と見積もっており結果的には精度の高い見積もりであった。
三、工事予算及び決算
錦帯橋の再建工事は昭和25年、26年、27年の3ヵ年継続事業なので継続事業として決済をとれば良いが、社会、経済情勢の変動が甚だしき時節なので、
継続予算の形態を取りながら、年度ごとに追加修正して岩国市議会の予算承認と決済を求めた。資金が円滑に回り、工事を能率的に進めることができた
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昭和二十六年十月のルース台風により岩国市内の橋は、大正橋以外すべて落橋、流失した。住宅、耕作地も被災したので被害総額は十数億円に達した。
錦帯橋建設局はこの状況を理解し、与えられた予算内で是が非でも錦帯橋を再建するように節約・支出抑制に格段の努力をした。
予算と決算・清算の詳細は昭和二十六年、昭和二十七年の岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業歳入歳出予算書と追加構成予算書、
錦帯橋災害復旧費清算総括表、工事費清算総括表、収支決算表、錦帯橋災害復旧工事打切清算表に記載した
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 71
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 72
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 73
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 74
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 75
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 76
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附表
昭和二十六年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
単ページ 77
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
単ページ 78
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
単ページ 79
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
単ページ 80
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
単ページ 81
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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附表
昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出予算
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昭和二十七年度錦帯橋災害復旧費予算編成についての参考資料(予算案添付)
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昭和二十七年度錦帯橋災害復旧費予算編成についての参考資料(予算案添付)
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昭和二十七年度錦帯橋災害復旧費予算編成についての参考資料(予算案添付)
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昭和二十七年度錦帯橋災害復旧費予算編成についての参考資料(予算案添付)
単ページ 87
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昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
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昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
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昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
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昭和二十七年度岩国市特別会計錦帯橋災害復旧事業費歳入歳出追加更正予算(第1回)
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錦帯橋災害復旧清算総括表
総事業費: 115,888,039円
清算事業費: 112,365,021円
剰余金: 3,523,017円
建設省国庫補助金: 60,603,980円
山口県補助金と文化財補助金: 15,500,000円
岩国市負担額: 37,676,982円
工事費清算額: 96,619.756円
事務費清算額: 15,745,265
上記は、昭和二十六年秋のケイト台風・ルース台風の被害額 10,111,032円を含む
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錦帯橋災害復旧清算総括表
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錦帯橋災害復旧清算総括表
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錦帯橋災害復旧清算総括表
錦帯橋災害復旧工事費収支決算表
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錦帯橋災害復旧工事費収支決算表
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錦帯橋災害復旧工事費収支決算表
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錦帯橋災害復旧工事費収支決算表
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錦帯橋災害復旧工事打切り清算総括表
ケイト台風・ルース台風のよる錦帯橋再建工事被害額: 10,111,032円
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錦帯橋災害復旧工事打切り清算総括表
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