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第三回
錦帯橋国際シンポジウム
in 江戸


日程:2012年11月11日
会場:早稲田大学 大隈記念講堂
主催:学校法人 早稲田大学理工学術院 創造理工学部・研究科及び総合研究所
共催:岩国市
後援:公益社団法人 土木学会土木史研究委員会

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第三回錦帯橋国際シンポジウム

錦帯橋の価値
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開会挨拶
開会挨拶
福田 良彦 岩国市長
吉川 重幹:吉川家16代当主
時代背景として関が原後、家康の領地配分に錦帯橋の起源があります。 当時は、早急に堅牢な城郭を造る必要があり、吉川広家の都市計画は 城山を背景に山陽道を睨み錦川を防御ラインに城門橋を造った。 しかし、数10年間、当時の技術で造った城門橋が悉く流失した。


基調講演
基調講演
依田 照彦 早稲田大学教授
錦帯橋は柔らかいアーチ構造である。柱橋だと洪水の時に柱に流木等が絡まって流失する。 人体の足首には柔らかいアーチが三本あり、足裏で振動を吸収しており脳に伝わらない。 また、アキレス腱は骨より早く切れるので骨を守っている。錦帯橋は、この構造に似ている。 錦帯橋の架橋は終端に沓を履いている。驚くことに桁尻が沓に固定していない。 木材なので水が溜まる終端は腐食して短くなり、どこか1箇所だけが接続している。 石造アーチのキーストーンは底辺が上辺より短い。錦帯橋は桁の接合部のほぞで、少しづつ傾斜を造っている。 大棟木はキーストーンの位置にあるが、長さは木材の乾燥やしなりを勘案して決めている。 木材を束ねる巻金は昔からあり、これを利用している。 錦帯橋は懸垂曲線であるが、上向きの懸垂曲線を造るのに巻金を使って締めている。 反力が隔石に伝わるので強固であり、学生が多数(16トン)乗っても問題ない。 台風の時、先に柱橋の柱が流失するので水が流れて減災効果がある。 現在、橋脚には井筒構造にして1m高さを上げる。 流れにより石が動かないように石と石に穴をあけ鉄と鉛を流し込んで接合している。この契りは中国の技術であろう。 錦帯橋は影も味があり美しい。 「よい作品を生み出すには、それを愛することが第一、技術は第二」

パネルディスカッション
パネルディスカッション

◆コーディネーター
小林 一郎:熊本大学大学院教授
◆パネリスト
大熊   孝:新潟大学名誉教授
依田 照彦:早稲田大学教授
腰原 幹雄:東京大学生産技術研究所教授
中村 雅一:岩国伝統建築協同組合代表理事
福田 良彦:岩国市長

新潟大学教授 大熊孝
錦帯橋は生活に根ざした橋である。キジヤ台風で流失した時に橋脚内を井筒方式にして高さも1m上げたが、 1997年の平成の架け替えの時、橋脚を昔の空積みに戻せないか文化庁から河川工学の専門家である自分に打診が有った。 平成11年の台風の時、1m下まで水位が上がった。今後、洪水が厳しくなる可能性があるので今のままで良いと判断した
パネルディスカッション
「究極の名橋 錦帯橋」という論文を執筆中である。第一回シンポジウムでイコモスの先生から錦帯橋と同じような橋は本当に無いの か調べなさい指摘された。再度調査した結果を5章に書く予定であるが、無いというのが各執筆者の結論である。 長崎で集積材を使った木橋を設計したが、猿橋と錦帯橋が参考になる(東京大学 腰原教授)。 岩国の人にとっては空気みたいなものである。
錦帯橋は、橋脚、敷石、架橋の一体で276年間、維持された。第一、第五の柱橋は洪水の時に抜けやすく造っており 減災の役割を持つので、真ん中のアーチ構造の三橋だけでなく全体の五連で錦帯橋である。 川底に敷石をしているのは、江戸時代、鹿児島の大築川の石橋の下にもあったが、残念ながら流失して無い。 江戸時代の木橋は川に杭を打ち込むものでスパンが短い。洪水でゴミが引っかかって殆ど流失した。江戸時代の木橋は流されてばかりであった。 アーチ石橋は頑張っていたがスパンが1830年の永代橋の28mが最大で、錦帯橋の35mは最大である。 日本木造建築の伝統技術は柱と桁(水平・垂直)であり、錦帯橋はありえない。曲線で斜めの部材は当時、誰も思いつかない構造です。 4〜5mの部材で35mのスパンを実現している。柱は古代から集積することがあるが、梁に束ねた部材を集積する建物は日本に無い。 色んな種類の木材(松、ケヤキ、杉、栗など)を使っている。岩国で入手できる木材の特徴を活かしている。 山の木は年々変わっている。樹種に拘るより機能性能を守って変えることもありうる。 一般住宅の建築と錦帯橋建築の大工仕事難易度は同じである、ただ、錦帯橋を工事するとき下が無いので、いつ崩れるかひやひだった。 また、大棟木は図面どおりにやっても造れない。完成後、橋の高さが少し沈む。このため口伝で両端4分(12mm)長くして高くしろとの言い伝えがある。 平成の架け替えでは3分(9mm)両端を長くした。 伊勢神宮は20年置きに遷都している。昔の部材が残ってないので遺跡ではないと言うのではなく、昔の技術そのままが残っているのが重要だ。 また錦帯橋は井筒構造にして高さも1m上げたが、自然環境に合わせて対応するのは問題ないと考える。 彫刻等は外力は変わらないが、錦帯橋は現に使っているので人命を守るため平成17年の洪水に負けないように改造するのは仕方ない。 錦帯橋を残したい人が多ければ価値がある。錦帯橋が造られた中世は神社仏閣・城の建築は少なくなり一般住宅建築に比重が移ってきた。 城は造れなくても、橋に最先端技術を残そうという動きがあり 型板や丘組みなどで技術伝承が続いてきた。 世界遺産としては、橋の周りに生活があるか、橋を使っているかが重要である。岩国市は今後、20年置きに架け替える。 文献があれば伝承できるので無く、経験した人が次の人に使える。橋の価値だけでなく、技術集団が維持できたのが重要な価値である。 次回の錦帯橋架け替えは平成33年である。上流下流に新しい橋があるが景観が悪い。作り直すとき場所を変更して欲しい。 川原を駐車場にしているが、規模を縮小したほうがよい。横山・錦見の生活が残る都市計画が重要である。 建築会社が大工を使い捨てにしている。 20年間、熟練大工を確保するには昔ながらの墨付けなどが習得できるような古い文化財の改修などの発注が出来ないか ランドセルを背負った小学生が錦帯橋を渡っている風景を変えないで欲しい。錦川の水は周南などに分けているが普段の水量を減らさないで欲しい。 人材・財源を適材・適所に配置して欲しい。20年間で循環型資源になるように木材の再利用の工夫がいる。 熟練大工を確保するにはプレ加工した大手ではなく、近所の工務店に発注して下さい



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